星月夜

538  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  やがて時が経ち、戦争が終結して私は大陸から帰還した。
  
  私はこの国で一つの街を建設しようと思い立った。
  
  誰もが助け合い、貧しい者も富める者も差別なく暮らしていける街だ。
  
  それが私にできる贖罪なんだと私は気づいていた。
  
  それは数百人から構成される村から始まって、皆で農業を運営し、生産物を都会に卸すことで生計を立てるものだった。
  
  初めの三年は理想は保たれた。 持ち物はすべて共同の物であり、お互いに貸し借りしながら暮らしていた。
  
  助け合いの精神は隅々まで行き届き、我々はお互いを信頼しきっていた。



                        ミ               ,、,、
                  ハ    ミミミ  ミ      .:..    .:.:淡爻:,
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539  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  だが村はそれから五年で一気に一万人規模の街にまで育ってしまった。
  
  成長のきっかけは桃の栽培だ。 我々の村で採れる桃は都会で素晴らしい評判を呼び、
  
  一個当たりの価値が通常の価格をはるかに上回るものになった。
  
  すぐに大手のフルーツ会社であるブラウン社が事業として桃の栽培に参画してきた。
  
  何千ヘクタールの農地が新たに切り開かれ、数千人の労働者が村に引っ越してきた。
  
  彼らを相手にする飲食店が建設され開店し、街はにわかに賑やかなものになった。




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540  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  理想は、急速に薄れつつあった。
  
  私が何より悲しかったのは、村の建設時から共に頑張ってくれた者たちが金の虜になっている姿を見ることだった。
  
  彼らは桃の栽培方法を教えたり、移ってきた新たな農民たちを指導する約束の代償として、
  
  ブラウン社から多額の報酬を受け取っていたのだった。
  
  私はこの頃になると夜の自宅で、一人で日本刀を抜くことが多くなった。
  
  それは大陸で初年兵として配属された時に捕虜を殺害した日本刀である。
  
  私は度胸試しに捕虜を殺すことをいかついベテラン兵たちから迫られ、それを果たしたのであった。





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               //壱万円 |                         / |
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             〃((  |ヒ| ノ┐|                V|         |   |
             〃。)       |                             |   |
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            三三三二=── 〉====================二二二二> '′
            Ξ三三二=-  ̄// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



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541  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  以来私はその日本刀を大事にしてきた。 いつか自刃して果てる時に使おうと思って取っておいたのである。
  
  無抵抗の捕虜を殺すことは私にとって恥であった。 罪悪感であり、唾棄すべき過去だった。
  
  それを雪ぐためにはきっと自分の命を使うほかはあるまい。 それが私の考えだった。
  
  しかしせめて母国で汗を流して働いてから死にたい、というのが私の宿願であった。
  
  それも結局は無駄に終わりつつある。
  
  もう死んでしまってもいいのではないだろうか。 私はそう思いつつあった。



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542  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  私は日本刀を首に当てた。 力を込めようと意志を働かせる。
  
  さあ斬るんだ。 あの時捕虜の首を背後から斬り落とした時のように自分自身の首を斬るのだ。
  
  だができなかった。 私は自らの勇気のなさと卑怯とを責めた。
  
  私は夜の街に繰り出した。 何も胃に収めないまま何杯も酒を飲み、深く酔っぱらって道を歩いた。 足取りはふらついた。
  
  そこへ女郎が姿を現した。 私は女に乞われるままに彼女を買い、自宅で閨を共にした。




                          ,.. -- ‐へ.._
                         , '´     /   ` 、
                      /    / /        `ヽ
                  _,. -ァ'´ /  , '/ ,'  ト、\       ヽ
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                    , '// /f   /!_|.! l i  l l i‐i-i、i_l l ヽ  '.、
                    ,' i  ! |  !´l !ヽ! i ! l_!L弐ii゙i }  }  ド、、
                     { {  ト、!  |! ,l。:ャj  リ リr':::}}ヽレ'  ハ ! ))
                   、 、 ! ヽ{(゚t..::j'!     .i、:ノ! リ ノ! リ ノ'...
                    ヽ)、!ト、ト、ゞ''´  ,  ´ ̄`,,ノイ  ソ|..
                       ′ヽ.! ハ '' "  ーァ ゛゛゙.彳ハ ( l
                    ,. っ ,'//i` 、 .._ _,. イ-//ノ ! ヽ\
                   / , '´ /,'//_ノ/,.ヘiーr''´ // ∨ i  ト、 \_.
                 r' -┴、 'ノ,イ!  ノ スフハ //   \! | iヽ-、ヽ.._
                j  ー-、レ'つ|レ ´ ,. 〉バ //ヽ.    \| | \`ー-..ヽ
                 /   ー‐<´/|l〈  // .ハ i i  〉  ,. -ヘ|ヽ  \  ヽ`、
              ,.イ    ノ´>┘  フつ、/〉' ! |、ヽヽ〈 ,. -',. -ヘ 〉ヽ\ \ ) ;
             / /|  フ `i、   /`/ ,'∠.-! ├へ\\/    i  ', ',ヽ、',ノ
           /  〈i し'′  ノ 〉 !  / / / ̄|  |`7/\ \  |  i  i  ! }
           ,'   ,. i    / ,イヽノ_コ┤,'  └‐┘/   \ ヽ、!  i  i ,' ,'
           / ノ>-‐'′ /  \--┤i__     /     \ ',ヽ.ノ / /,.'

543  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  我々は行為を終え、二人横になって会話を交わしていた。
  
  すると彼女は大陸の出身であることが分かった。
  
  女郎は十二歳の時に軍に誘拐され、以来戦争が終わるまで軍人たちに延々と犯され続けたのだと言う。
  
  私の胸が軋んだ。 詳しく聞くと、それはまさに私の所属していた部隊であった。
  
  その時の私の受けた衝撃たるや、筆舌に尽くし難い。
  
  私は当時同僚がそうした行為に励んでいることを知りながら、黙認していたのだった。



   /  / .,.、 -‐ '' ""´´                         :::::::......_
 /   /     i                              '::::'''"´    ``
,´   /     .|!         '     ,‐-- 、  ::::::::::/         _
   ./      |          \ .{   }  u/       ''"´
   /    |                 }` 、 ''  ,..: "
 .‐" ̄ ̄'''|!ー―--‐ '' " ̄ -、,__ノi  `  ´{              ..::::
     ι.!               `ー 、,'-‐、 `ー-一'  ̄ ヽ  ..::/ ...::-―=ニニ
‐- ....,,_                                 i ::/
       ̄ '''''.ー―-―l                     ,   }∨       _
  i             l ..:r;::.   `ヽ          ',/            ,ィニ-ヽ-、
  |i             l ::. `´         ..:r;:. }  .l       /´,ィ''´ヽ‐' .}
  ||              l :::...、     : ::..  `´ .,'   l     ノ } i   ゙' ヘ
  :!             .l        ::      l   .l   /"`マ_/      ',
                    l        :::      .i u. l.   ',           }
                l        :      .l   .l  ..,ヽ        ノ
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                ,'             l....l      / ...ハ      l
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 /          ゙ー----‐' ヽ'       _..-'"        |     l
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    / i  ι        .,':::::::::ij:::::}:::i                   l
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   ./   ! ̄ `、ー .|!--<_  l:::u::::::::::::::::l   ゙ 、_..|!--―‐_.-‐ ̄"
   /      `'ー|i .._   ̄!::::::::::::::::::::::l' ー''"  |i.-‐ "
  ./         ||   `'ー‐ '       ゙`'ー‐ ' "||
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544  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  結局、罪から逃れることはできないのか。
  
  私は女に洗いざらい自分の知っていることをぶちまけた。
  
  そして赦しを乞うた。 自分のできることなら何でもする。
  
  どうか私のことを許してほしい。 いや、許さなくてもいい。 私のことを強く憎んでくれ。
  
  いっそのこと私のことを……。





                         _,.. -‐―‐-- .. __
                       /´   .      `ヽ 、
                      / 、、: ヘ :::::::.....      \
                     ./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._   \
                    /   /  \!´   \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
                    `‐rt-'....,,,___」     \::!    .ソ_,ノ
                      !:.\::::..  ヽ      >、:.、../_,、!、
            , --v‐- 、 _   ヽ::.ヽ::::..  `、    /  ニ,:',.':::::::(´
          , - ';;/::ノ.:::// l ̄`―`-:;;\::..  ヽ   /   /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
        //.:::;ィ'":;∠;_/.:::!::::::.............  トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii'   ミ!ユ、
       ..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘
            `┘             ´ ̄       ̄  ̄  ̄ ´


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545  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  「なんでもするとおっしゃいましたね。」
  
  女は尋ね、私は首肯した。
  
  「それでは、虎になってくださいまし。」
  
  虎になる? それはどういうことだろう? 
  
  「子供のころ聞いたおとぎ話で、虎にまたがって異世界へ渡るというものがありました。
  
  その話を聞いて以来私もいつか異世界に行ってみたいと思っていたものです。
  
  ですから、どうか虎になって私のことを背に乗せてくださいまし。」




            _,、r''´、..... .................................................ヽ
          /,ィr''´  ........   ...........................................ヽ
         //.........,、- _  _,、.....    ......................................゙,
        !/...//.././....../.._,、    .................................゙,
        / / /: , イ.../ / / /..  ...|..i.i    ........................゙,
         |/! / ,イ.l..../_!/!/../i::.........::://..i...::!   .........................゙,
         | l| | |,イ´|jフ|`/ i':::....::ノ/ / !...:;!...::.... .......................!
         |ノ| | |jl,ィこ!ヾ! | , イ∠/、,'j: |....!................................!
           !: '、!ij'|ir!|   j/ リ/ノレ'∧ / /...:.......l........|::..::..:::::!
        .   ヽ_ト,._!bj     '´7ユヾノl /.../........! ./ l !::...:::::
            ∧  ̄       ! !r i!ク__ノ.../ / / ,'/:::...:::::
            //∧ ’._.    、| し!:!|_/,、-'ノ / ,'/:...::...:::::
          /,' / ∧ | `>    ヾン-=ニ-'ドレ'レン:..::::::::::::
         /, '´/ ./:: ヽ ´      _,,.. '´ノ, '//..:..:..:::::::::::::::
   _,..、-''",ィ ,ィr''´ ./ ::.::::::` - ァ-- '''""_,、r''´//,':..::::::::::::i::::::::
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 ! !    /...:/.V / l     |.  |:ソ.:/ /.://....::.::...,':::::::.:::::,'::::::::::::

546  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  「いいだろう。」
  
  私は立ち上がると家の奥からいつもの日本刀を取り出して抜刀した。
  
  それを首に押し当て一思いに引き、頸動脈を断ち切った。
  
  血しぶきが上がり、女の体を濡らし、床を赤く染め、私の体をも赤く染め上げた。
  
  私は倒れて意識を失った。
  
  そして再度立ち上がった時、私の体は虎になっていた。



            :,:              (/)
            ノ霜斧ミx,゜      '´          _ノ(
           (圭圭圭{!'                (圭{
           寸圭圭イ :';'''                 '´⌒
           τ'{{7⌒∴:
            )/
         。∴{!                       _,ィ(。
        _,ィ(                       `'''´⌒'・
     ,ィ圭||ア '’    __                 ,ィ(____,ィ∵               ,ィ(_
     炸圭(       ,ィ升彡               ノ圭圭圭圭そ          。  佳圭心、_
      ⌒`寸ト、   ,{抄'⌒    ノ斧ミ、 o    ∴炸圭圭圭|iて ',∴ ・         _ノ佳佳佳て。
       ゜     ノ/        ⌒∴   ・ ノ(_ノ圭斥⌒',寸ミ、        ',.:,:・'`¨∵¨¨⌒´
     ,,、    //   ノ(          /少'⌒ `       ..,, _,.。x≦少"・       ,ィ(_∴_,:・・
  π_ノ心、_ノ(,炸||(   ,,.,⌒ ・っ  ∴ ・                 ;,,ィ炒⌒;.    c=≠二,ィ炸圭圭(;''
   )圭圭圭圭圭ア  ∴:¨'`   `                     ',∴ ・     ⌒ 寸筵τ'⌒``
 τ`Ⅷ:圭圭圭圭(_ノ廴 τミx。、∴__            ノ廴_,ィ炸廴ィ
   )}圭圭圭圭圭そ `⌒'・    __,ィ圭掛x、∵      ,ィ炸圭少⌒'・
 _,ィ炸圭圭才寸圭廴。x:≦少"´⌒''''⌒¨∵¨´      ⌒¨¨∵:・
   ⌒`寸ト、∴`寸ミ、 ∵:・
      `寸そ:¨'`沁っ


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547  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  私は虎になると女を背に乗せて、風のように駆けた。
  
  百キロの道のりを軽々と乗り越えて、かつての軍属時代の同僚たちの家に押し入った。
  
  虎となった私は嵐のように暴れまわり、彼らの腕を、首を食いちぎった。
  
  私は一晩のうちに思い当たる当時の犯罪者たち(三十人はいた)を殺し尽くすと、
  
  女と共に海を越えて、異国の街に渡り、そこで暮らした。
  
  女はそこを 「異世界」 と捉え、満足したようだった。



.                                _
.         __                    /,,, \
       ,,/..:::;,\_     __,-'  ̄ ̄`‐-、_   ,/,;;:::  :: |;
       | .::  ::::ヽ\-‐' ̄;;;;;;,,,'''''',,,,;;;;;,,,,..  ̄//::  :: ノ
       |    ::::ヽ`ヽ ,,,,;;;;;''''';; ;;;'';;';;;;;;;;;;;;'''';;;     :: /
       \_  ,,;;;;  ,,;;''  ,,,;;;;,  ;;   ,,;;;,,     ''';;;; <
         〈 ;;   彡;'' (;;;,'' j  ;;  ;ヽ;' ; ';;) ;巛  '''〈
        / ;;彡 , ;;.._  /,;; ''   ,,ヽ;;  _,,;;  ,;; '';;ヽ,
       ;/  ;彡' ;;' ~ヽ,( oヽ,〉''     /y'( o,),/~ ;;ミ ミ;; |;
       ;;|  ;彡 ;;; ミ;  ー;'ミ|      ヾ彡;'´  ;;' ミ  ミ |;
      _;|   ;ミ ;: ミ   ミソ   ..:: ::..  lミ  ,,彡 ;; ;;'' |;;.
   _,- ',,'' ;;l ;ミ, ヾ   '' ;;;l''  :::.   ::.  ヾ ,,;;;;;ソ ノ;; ミ|
_,-'jj ;/''  ,,:jj ヘ;: ;;;ミ''; ,''  ;;:: ::..::: :::;;  :ヽ  ミ '' ミj;ー、
/; ;;/;' j;j'' ,,,j;;''彡;;  ミ   ,;l , , `ヽ;;,_ ,_,)y , ,tーニ二;ニ_` |:
.,,// j''  ;;;''  メ;二ニ=-j;,; ; ;; ,, lミヽ_;`;_r'' ,,; ;; ; ; 二二ニ;二ー_ |,
/''    jj;;''l  =,-メ―ニ l;;; ; ; ; . ' ヾ;;/ ,, , , ; ; 二;_ーlニ二_ |,
    /;; ヾ''';;;:;;:;;,,.ヾニ=,ー、_;_; _'_,/=\_'_'__メ二__lニ二_ ;|;
  ,,;;'' /'  ヽ  '';;;;;;;,,,.. _;;;ヾ;;;;''' '';::'';;;'''  ';;'/;;ー、ソ     ,;;ミ|,
 ;;'' ;;''   /;;〉    '';;;;;;;,, ``ヽ_       ,j,'  /''  ̄ ,;;彡'' :|
/''   ,,;/' /''|;,,     `l;;;,,   `y_ ; ; _; ; '/  ,,;''    彡''   |:
    ;;'  ;'/``;;;,,,..    ヘ;;;,,.  ゙ '´ `´ ''`,; ''     ,,彡''    |;
   ,,;;'  ;j''   ''`;;;,,.    `;;;,.           ,,;;''      ,,|,
   j,;'  /;;,,     `;;;,..    ;;',         ,;;;;;'''     ,,;;;'' ヾ
;;  ;;''  .;/ `;;,,     `;;;   ;;..        ..;;;;''   ,,,,;;;;;.;''   ヽ;

548  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1


                , -=ニニニ≧ 、
            / ´+ ※  ※ +ヽ\
          // +_r冖^::丁:「:トミヽ、\ヽ、
            〃 /:l:::l::j::.::l|:::|::|::.:ヽ::.\}〈
.          ハ/::.::.:|::.|::l::.::l|:: ト:レく::.::、::.:lハ          「異世界。」
         l {::.::.::.l|::|::|:::/|l:::| l|x=ャ、|::.:l}::.ヽ
         | l::.l::、::Vィ7厶lハ:j ヘ:::ノ!|ハノ|::.::.:\
         `T:ト、:ヽヽれ:::〉  ,  "リl ノ:_::_::_:::ヽ、
.            ヽ:::ヽ::\ミ`゙  <__} ,.仏 ト{ r'´: :`丶ミー--冖、
              `ヽト、`丁≧┬r彡' _」/ ヽ: : : : : : : :`: : :八:_ヽ-ュ             /^h
             j:::} }:」 rー≠()く⌒ヽ  \: : : : : : : : :/イ l「 ` ー--―rv、  / //
             /:::| /: r1V/ノlト、\_}\ >r  ̄、l ,‐┐ヽV | |        { l|冫´-クノ
               /::.:「//: r1イ / |:ト、\   `丶、 /|ヽ }_:_:;:ィ! Y¬ー- 、  }||廴/
           /::.:rく: : : >}{// |::Vヘ }  r-vハ ̄`ヽノ::.::∨ト、ハ\    ̄
          /::.::厶: ヽ:勹 ,'::|  ヽ:∨乙ヘノ, イ::.:丶、 ::.:::\::.:|: : /〉 〉
         /:::_r1{><\/:7::::トヘr-ヘ:\r-'´≧ヽ、__::`ヽ、::.` | :〃:/
        /r‐'´※ ハ|: : ハ{:_:_广:;ゝ二ニこr'′: : : :Y>、::`丶、V/ト、
.     /::.::;ヘ _/   ヽ/: : ∨_/: : `ヽ「∨: : : : : : : : \}\::.::.::丶、::ヽ
    ,.イ::.::/::.:rヘ、   /: ; :-'´/: : : : : : : : : :/: : : : : : : ヽ〉:` ー- 、:丶、\
 ,.:'´::.::./::.::.:r=ミ、 _/::}/ r彳 : : : : : : : : : ∠: -:'´: : : : : : : :\: : : : : `丶、:_ヽ





/ / / / //^\     丶   \ /^l
 / / / /  || 〉 > ニ二天二ニ <´⌒|
  / / /   v'   / ___人__ \   /         「それがこの街だ。
  / / /   /    / __人__   〈
   / /   /      (   、 ,  )    \        正確にはこの街のオリジナルだ。
      /  /  /  `Tf亡i `Y´ jヒjT´ l l ヽ
 i      〉 |  |  lゞミァ^ー ^ ー'^ニ彡'|| 〈.         ここはコピーだからな。」
 l     |  ヽ  \_ /へ ヽ  /  ヘ _ノ l 〉
 |     」: .  \__,」   r_―‐ュ _」_ / /
. :|l      \: .ニ二三キ三   `T´ 三メ三二テl
: :|\     :.:>X彡'^`Tヘ「`^ ̄^lフ^メ`丶`ヽl
: :|,  \    .:/.:/`ヽ  V |,、,、,/| |  \\ |
: :| \  \ : : : : :/: : : :\`^ ̄ ̄´ ノ  / ̄ |

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549  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1


                ,厶XXXXXXXXXYXk_
             , '´ , '`^^⌒^^¬XXXXXXXk
           /  .:/ /.:'´/    `YXXXXXXL
          , '´   .:/;イ / ; /    `YXXXXX7
       / /:;  /::/ / /, '//   :;  } `YXXXハ
        / ,'::///::/ /:!/ .:/ '   .::/ .:/ 、 `YXノ ハ
      { l://;::;'::/ /:/l:|::/ :;'  / ::/:l .:|! |Xx)  `、
      ` {ハ:|:j::j丁7メ!|:l :/:/ .;:イ .:ハ ::j  lX「    ヽ
          乂V!| f「::`Y|l:l// .:/_7メ、j / .:/xr′   `、    「そして疫病で死んだ?」
          /XXX!| `='′リ〃´ イ::::`kl|:/ ::/Xx}个 、    l
       / XXX八 ″  ,    ゙=‐' グ ;:イX(   !  ` ー ┘
     /XXXXXxヽ、  、  ""‐=彡'´XXX} .:|
      /XXXXXX7^二\    ,. イXXX7⌒´ l: |
    /XXXXXX/ {r=‐う斤-、 jXXX{_| .:l| ::l |
.   /XXXXXX/  し冖イ/ ト、ヽYXXX/rヘ ::|l :l:|
  /XXXXXX/     _{7/r1| VXXX/_「: :.V |::l{
∨XXXXXX/     _j///l_)| /XXXx{-< : : ∨::l:|
/XXXXX7´       {//小| }VXXXXxlニ{: : : : Vハl
XXXXX /_       //ノ( l| )jXXXXXに|:.l : : : V:ト、
XXXXx/ `ーz   //_} ( | {XXXXXxY):.l!::. : : :ヽ、ヽ、
XXXX/⌒Ln `ぅ//_)  ( 廴}XXXXXXL:.l!::.: . : : }:`ヽ}




    r‐、_             _ィ-、
    |::::::::`ヽ、,_,ィー----一-、∠::::::ハ
    >,.''':::''"ソ,.彡'==tr==ミ:ヘ、'''"_,/
     "'ーァ ,. ;i'"_,,_=''ヘ=t=/''=_,_ i! {,
     、ミ゙'' ,i:' tー-、(:、   ノ--ァ'i, 'r           「そうだ。
     ミ'" ,il゙  ゙'==';;7   〈=='  ゙! 彡
     ,「;;: i! `'ーノ ;:゙ :::::::::: ヘー'゙ i! 'ミ           それはまた別の話になる。」
    ,.;' '─il-ヾ__,.--{^'ーv‐'^}-、_,⊥-─
    彡,--─===_: `゙'Y'´:.===‐--
     彡ノ, /'T''--一'^ー-ァヘ´⌒ヽ
     彡'ミ゙  ヾヽ、/l;;;;;;;ハノ,:'  ,ミ`
      } ":シ:::.."ヽ,,__,,ノ`ミヾ`ヾヽ、
     /il  ゙:::::::::.:::::::::::::::::::::::::'''   ゙i:,`''ー-、
      } ゙i!                i:!    `ヽ、
     / 'i、                ,i:'      `''ー

.

550  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



/ / / / //^\     丶   \ /^l
 / / / /  || 〉 > ニ二天二ニ <´⌒|
  / / /   v'   / ___人__ \   /
  / / /   /    / __人__   〈
   / /   /      (   、 ,  )    \
      /  /  /  `Tf亡i `Y´ jヒjT´ l l ヽ      「さて、これで一度目の穴掘りは済んだ。
 i      〉 |  |  lゞミァ^ー ^ ー'^ニ彡'|| 〈
 l     |  ヽ  \_ /へ ヽ  /  ヘ _ノ l 〉      君の身に変化が起こったはずだぞ。」
 |     」: .  \__,」   r_―‐ュ _」_ / /
. :|l      \: .ニ二三キ三   `T´ 三メ三二テl
: :|\     :.:>X彡'^`Tヘ「`^ ̄^lフ^メ`丶`ヽl
: :|,  \    .:/.:/`ヽ  V |,、,、,/| |  \\ |
: :| \  \ : : : : :/: : : :\`^ ̄ ̄´ ノ  / ̄ |




                 ____
           ,、-‐ '´ _ヽノ__`ー-、`ヽ、,
          ,.ィ'´ __ ノ.lヽ    `ヽ、 `ヽ、
          /':´: ̄: : : : :  ̄`ヽ、,      ヽ   ヽ
       /: : : : : : : : : : : /: : : : : :ヽ _ヽlノ_丶   \
.      /:: :./: : /: : : : :./: :./: : : : : :ヽ/.lヽ i     \      「変化?」
.      ,': :.:/: /:///:/: :./: : :/: : : : l    l      ,ゝ
     l: : :l/_/////ヽ:l:.l: : :l: :.:l    l    ,ィ'´
.     l:l: :l!トモハ  /  ̄`'ヽ:l: : l!: : l    l   ,.ィ'´l
      l:、:ヽゞツ    イほハ'.、l: /: : l    l.,ィ'´:.: : l
.      ヽ!ー` '     弋:::ン.ノ`/: : / 、ル_ /: : :.: : :.:l
       /ヘ 、 _          /: / ノハ./: : :.: : : : :l
      /. ヘ        //   ./: : : :.:/: : : :l
.      /_ヽレ./ー - ―、.' ´/   /: : : : : :./: : : : :l
     / ノ.ハ/     ヽ/   / |.: : : : : : :l:.: : : : :l
   /  /      /_、ル._/   l!: : : : : : :l: : : : : :l
  /  /     ./  ノ.i/ヽゝ,. l!: : :.: : : :.l: : : : : : l
/  /     ./   ./::::::::::ゝ ノ: : : : : : : l: :.: : : : :.l

551  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



/ /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ\
.  /: /: : : : /.: : : : : : :/: : /: : : : :\: : : : : i  '.,
 /: /: : : : /: : : :_,: : :/: `メ-――--、ヽ: : : :|   i
./ ;イ.: : : :/:/ ̄: : 〃: :/  \: :_: :.i: : : :.!  |/
' /|: : : |": : : : //:./ x=≦云¨゙》、!: : : :|  |:ヽ
i/ |: : : :.|x=≦云/; '    Kノ }   .}: : : ;'   ヽ
  |: : : :.《 Kノ:::}   ,  `¨¨~´ /.: : :∧          「何も起こっていないような気がしますけど。」
. 八 : : : ヽ ゞ¨~             /.: :/.: :ヽ
    \: : : \       i ̄ヽ   ,/:/: : : : : :i
  /: : ` =―-≧   ヽ-‐'   /: : : : : : : ヽ
. /_,.z=ヽ_: : > .、 _      ,ィ: : : : : : : : : : : :\
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::::::::::::::::::ヾ} | }    〃   ,イハ¨゙ヾュ、 ̄Y´, ̄ヽ




    r‐、_             _ィ-、
    |::::::::`ヽ、,_,ィー----一-、∠::::::ハ
    >,.''':::''"ソ,.彡'==tr==ミ:ヘ、'''"_,/
     "'ーァ ,. ;i'"_,,_=''ヘ=t=/''=_,_ i! {,
     、ミ゙'' ,i:' tー-、(:、   ノ--ァ'i, 'r       「自分の身の変化は、何か他の物と出会って初めてそうと分かるものだ。
     ミ'" ,il゙  ゙'==';;7   〈=='  ゙! 彡
     ,「;;: i! `'ーノ ;:゙ :::::::::: ヘー'゙ i! 'ミ      例えば鏡と出会って初めて顔の小さな傷に気づくようにな。」
    ,.;' '─il-ヾ__,.--{^'ーv‐'^}-、_,⊥-─
    彡,--─===_: `゙'Y'´:.===‐--
     彡ノ, /'T''--一'^ー-ァヘ´⌒ヽ
     彡'ミ゙  ヾヽ、/l;;;;;;;ハノ,:'  ,ミ`
      } ":シ:::.."ヽ,,__,,ノ`ミヾ`ヾヽ、
     /il  ゙:::::::::.:::::::::::::::::::::::::'''   ゙i:,`''ー-、
      } ゙i!                i:!    `ヽ、
     / 'i、                ,i:'      `''ー

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552  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



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553  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  ホテルに戻って服をすべて脱ぎ、裸で鏡の前に立ったが何も変化は起きていないようだった。
  
  私は再度服を着ると、影の少女と共にベッドに横になり、しばらくの間休憩した。
  
  この地獄の街には昼も夜もないようだった。 どれだけ時間が経とうと明るいままなのだ。




                        _,.. .― ´/   /   ` -、、
                    ,'     ̄`  '´         ヽ
                      レクノ,.-,   ∩∩            l
                     ////   f| | | |(\  ,ゝ、    l
                  /  '´ニ⊃ r|ヽヽ ヽ.} ヽ   '.     !
                  /   ´ニ⊃ i!.|ヽ     |  ∧    '.
               /    ,イ´   人`ヽ      !  / '.    .'.
               ヽ _,.イ_ヽ       ヽ.    ヽ.'   '.    '.
                 `、    }          \    ` ‐―-、  '.
                   '.    l              ` 、      ヽ i
                   '.   l            l ` 、      !
                  `ー !             l    `ー―‐'
                      ,'                !
                       /   、             '.
                   /   ′             '.
                     ,'                     `.
                  l                  `.
                   l  、       ,          '.
                   l   ヽ      /            }


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554  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  私は影の少女を抱きしめた。
  
  少女は輪郭の曖昧さに反して、肉体の感触だけは確かだった。 柔らかく、温かい。
  
  しばらくの間我々はそうやって抱き合って過ごしていた。
  
  私は水銀燈のことが恋しかった。 これは孤独な戦いだなと思った。
  
  だがここまで来ることを選んだのは自分自身だ。 最後までやり切らねば。



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              ∧|:.:|i : : : 从乂)zソ          乂)zソ|: :/ : /: /   ∧
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555  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  少女は左腕が不自由のようだった。
  
  先ほど食事を摂る時にこの子が右手しか動かしていないことに私は気づいていた。
  
  この子を守らねばなるまい。 私はそういう気がしていた。
  
  守ると言っても、ただ一緒にいることしかできないのだけれど。




            γ⌒ヽ::::::::::::::::::| \:\:::::::::\-──-ミ::::::\::::::∧
         ...-一弋  丿 :::::::::::::::l   \::\ :::::::\:::::::\:::ヾ::::::::::::::::::、
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                   \ハ、              ィ(/__
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                          ー‐rr─── '´    \i:i).......\
                          _{{....∨  ヽ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
                         /|从......}     /....../ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
                            /...|  \..}_/....../       /ハ
                         /......|   \/__/
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556  名前:◆NBJATnhEhM[] 投稿日:2020/08/09(Sun) 09:50:31 ID:3c2f75c1



  「自分の身の変化は、何か他の物と出会って初めてそうと分かるものだ。」
  
  何か他の物とはなんだろう。
  
  私はベッドから起き上がり、例の鐘塔を目指して歩くことにした。





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              `¨¨ |: : : .  :l       l: : :/ ト--イ
                ヽ: : :  :|     レ'´|  〃⌒ヽ
                        ̄` ー--イ  |  ハニ二癶
                              ',  |  { ` ー '^}
                             ハ __ハ 丶 _,.ノ
                            〉   〉
                         `T冖(
                           /⌒`il
                            j,ニニi|
                             ∧_,∧
                          ....::::;     }
                         ゝ---‐ '




To Be Continued.


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557  名前:大人のやる夫さん[sage] 投稿日:2020/08/10(Mon) 04:40:54 ID:8dac564a
乙乙!